ティタン
土星 VI
ティタンに関する事実
- ティタンは
土星に知られている15番目の衛星で、一番大きい:
- 土星からの距離:1,221,830 km
- 直径:5150 km
- 質量:1.35e23 kg
- ギリシャ神話では、ティタンは巨人族で、ウラヌスとガイアの子供でした。
天を支配しようとしましたが、放り出され、ゼウスの家族があとを継ぎました。
- 1655年、ホイヘンスにより発見されました。
- 長い間、ティタンは太陽系で
一番大きい衛星と思われていましたが、
最近の観測でティタンの大気がたいへん厚く、固体表面は
ガニメデよりわずかに小さいことがわかりました。
それでもティタンは直径では
水星より大きく、
冥王星よりも直径・質量が大きいです。
- ボイジャー1号計画の主な目的の
一つは、ティタンの研究でした。ボイジャー1号はティタンの表面から4000kmのとこ
ろまで迫り、我々はそれ以前の300年間で得た以上の知識を、この数分間で得ました。
- しかしそれでも、我々の知識は非常に限られたものです。ティタンは、非常に
厚い大気に囲まれています;地表は可視光ではまったく見ることができません
(写真 8)。
(カッシーニ計画では、
観測衛星マゼランが金星で行ったよう
な、レーダーによる地表の地図作成が行われる予定です。)
ボイジャーがもたらした画像もすべて、北半球と南半球でわずかに色の違いがある
のを見せるだけです。ハッブル宇宙望遠鏡では大気表面の細部を見ることができます。
- ティタンの内部構造は
ガニメデ、
カリスト、
トリトン、そして(おそらく)
冥王星とよく似ています。
- ティタンの半分は水性の氷で半分は岩石です。
それらはおそらく、3400kmの岩石コアと、それを取り囲む、それぞれ異なった結晶
構造を
持つ氷の層になっています。
内部はまだ熱いかもしれません。
レアやその他の
土星の月と似てはいるものの、ティタンは非常に大き
く、重力による内部圧縮があるので、密度は他の衛星より高いです。
- 太陽系の衛星のなかでただ一つ、ティタンには大気があります。
地表で1.5気圧(地球より50%高い)あります。
大気は(地球と同じように)主には窒素分子でできており、さらに15%程度のアルゴ
ンや数パーセントのメタンが含まれています。
興味深いのは、それ以外にもごくわずかな、12種類以上の有機物質(すなわちエタ
ン、シアン化水素、二酸化炭素)が微量に存在することです。
有機物質はメタンとして生成され、大気の上層に多量にありますが、太陽光線で破
壊されます。結果は大都会のスモッグと似たようなもので、しかしずっと濃いものです。
これは原初の地球で、生命が最初に誕生したころとよく似ています。
- ティタンには磁場がなく、時々
土星の
磁気圏の外側の軌道を移動します。
そして直接
太陽風にさらされます。
それにより大気上層の分子はイオン化され運び去られているかもしれません。
- 地表でのティタンの温度は94 K (-290 F)です。この温度では、水性の氷は
昇華することはなく、地表では水が大気の化学
反応に関与することはありません。
にもかかわらず、化学反応はいろいろと起こるようで、結果として非常に厚いスモ
ッグのようなものができます。
- 地表から200kmと300kmのところに、おそらく2つの雲の層があるようです。
その他の少量だがもっと複雑な化学反応が、宇宙から見えるオレンジ色の原因だろ
うと思われます。
- エタンの雲がエタンの雨を降らせ、地表では、深さ1000mに達するエタン(ある
いはエタンとメタンの混合物)の海があるかもしれません。
しかし最近の地上からの観測では、これには疑問が投げかけられています。
- 最近の
ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外線による観測で
ティタン表面の驚くべき画像が得られました
(写真 1、上)。
ボイジャーのカメラはティタンの大気の中を見通すことはできませんでしたが、近
赤外線では霞がより透明になり、ハッブル宇宙望遠鏡の映像は、ティタンの軌道上の
前向きの半球に巨大な明るい「大陸」があることを示しているのです。
このハッブル望遠鏡の成果は、ティタンに液体の「海」があることを証明したわけ
ではありません。しかし、ティタンの表面にだけ、巨大な明るい部分と暗い部分が存
在しています。
ホイヘンス観測プローブの着地地点は、
一部はこのような画像を検討して選ばれました。
そこは北緯18.1度、経度208.7度で、最大の「大陸」の沖合地点
(写真 9)になるでしょう。
- ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、ティタンの自転も、木星の他のほとんどの
衛星と同じように
同期型であることがわかりました。
写真
- (上) ティタンの「4つの顔」
1
25k gif;
36k
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(解説)
- 450万kmからの、ボイジャー2号のカラー合成画像(ティタン)
22k
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- 振り返ってティタンを見る
29k
gif;
41k
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6k
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- 土星の月、ティタン、雲の帯がある
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- ハッブル宇宙望遠鏡の経度315
での白黒画像
11k
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- もう一枚のハッブル宇宙望遠鏡の白黒画像
12k
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- ティタンのメルカトル
投影像
154
k gif
- ボイジャーによる
ティタンの可視光像
104k
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- ホイヘンス着地地点
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- COME-ON+ 画像 (地上処理の調整光学系)
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ムービー
- ハッブル宇宙望遠鏡の赤外線画像から構成したアニメーション
116k
mpg
ティタンに関するもっと詳しい情報
未解決の問題
- 液体の表面はあるのでしょうか?
- 内部は今も熱いのでしょうか?
- なぜティタンにだけ、他では見られない厚い大気があるのでしょうか?
- ティタンには有機化合物があり、液体のある環境である可能性もあります。生
命が存在するには極端に低温ですが、そのようなことがありえるのでしょうか?
ティタンは
最も生命存在の可能性の高い星の一つです。い
ずれにせよ地球の原初環境との比較対象として興味深いです。
-
カッシーニ観測衛星のレーダー地図作製機
とホイヘンス・プローブが、この謎の衛星に関する、正確なデータをもたらしてくれ
るでしょう。
(もしこの計画が米国議会を
うまく通過すればの話ですが)。
... 土星
... レア
... ティタン
... ヒペリオン
...
ビル・アーネット著;1995年 3月28日更新
久島 昌弘 訳;1995年11月 4日更新