ネットワークエチケットの知識

高橋邦夫(東金女子高等学校)

Index

0.ネチケット

1.偽情報に注意

2.電子メールのエチケット

3.コミュニケーションのエチケット

4.知的所有権への配慮


0.ネチケット

 インターネットには特別な法律はありませんが、無法地帯ではなく、現実社会の法律がそのまま適用されています。法律が社会生活のルールを規定しているのに対し、法律以前の倫理的な問題として礼儀正しく振舞うためのマナーやエチケットが存在するのもまた現実社会と同様です。

 ネットワーク上のエチケットのことをネチケット(Netiquette)といいます。ネチケットは円滑なコミュニケーションのための生活の知恵です。ドアを開ける際にノックをするエチケットと同じく強制されるものではありませんが、トラブルを回避し、礼儀知らずとか無作法というそしりを免れるための知識として身につけておきたいものです。

 ネチケット情報(ネチケットホームページ)
http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/netiquette/


1.偽情報に注意

 インターネットでは誰もが情報を「出版」できるので、有益な情報も数多く掲載されている反面、中には誤った情報や他人をだますために作成された偽の情報もあります。

 自分が読んでいる情報が信頼できるものであるかどうかの確認は、読む人それぞれの自己責任であるという自覚が必要です。また、いかにも有益そうで他人にも伝えたいと思うような情報に出会っても、実際に他人に伝える前に情報が信頼できるものであるかどうかを確認しておく必要があります。信頼性が確認できない情報は他人には流さないのがエチケットです。

信頼性の確認方法

□ 情報の発信者は信頼できますか
□ 発信者の連絡先が明記されていますか。(少なくとも正確な電子メールアドレスが明記されている必要があります)
□ 発信者が確かにその人物本人で、他人のなりすましではないことが確認できますか

□ 情報発信されたドメイン名の組織は社会的信頼のあるところですか

□ 情報発信されたWWWサイトは長い期間運営されているところですか

□ ほかの情報源で裏付けが確認できますか
□ 引用された情報には元情報の所在や情報の確認方法が記されていますか

□ 複数の情報ソースから裏付けが得られましたか

 このような、あたりまえのチェックを確実に実践することが大切です。詐欺やデマに巻き込まれないように注意してください。情報発信した人物名や情報内容をキーワードにしてサーチエンジンで調べてみてもよいでしょう。

誤報・デマの例

(1)グッドタイムズ・ウィルスのデマ

 「大手コンピュータメーカA社からの情報です。Good Timesという題名の電子メールが届いたら、メールを開いてはいけません。メールを読んだだけでハードディスクを破壊するコンピュータウィルスです。至急、友人にも知らせてください。」という内容の有名なデマゴーグがあります。この真似をして、
・JOIN THE CREW   ・PENPAL GREETING     ・Returned or Unable to Deliver  ・AOL4Free
・Bud Frogs Screen Saver   ・BUDDYLST.ZIP Email     ・Deeyenda ・Ghost.exe ・Irina
・A Moment Of Silence ・Valentine's Greetings
というような悪質なデマの亜種もでています。いずれも、A社の「誰」なのかという具体的な情報源が確認できないこと、ウィルスの動作などの技術的解説をよそおっているが動作機種や動作条件の詳細など検証可能な技術情報が含まれていないこと、恐怖心をあおって至急回覧させるように表現されていることなど、ちょっと考えればおかしいところが見つかります。実際、これらのウィルスで被害を受けたという実例はなく、デマであることが証明されています(http://ciac.llnl.gov/ciac/CIACHoaxes.html)。うっかり信じてパニックを起こさずに、冷静に対処するように気をつけてください。

 コンピュータ・ウィルスが存在するかどうかの確認・証明は、日本では政府の外郭機関である情報処理振興事業協会(IPA)が一元管理しています。コンピュータ・ウィルスについての噂を聞いたら、まずIPAのWWWページで確認してみましょう。

 IPAコンピュータウイルス対策室
 http://www.ipa.go.jp/SECURITY/index-j.html

(2)インターネットねずみ講

 「Get Rich Fast」「確実に儲かる方法」などと題して、電子メールや電子ニュース、WWWでねずみ講の勧誘を行う例があります。たとえば数人の氏名リストの人々に小額のお金を送金すれば、自分を氏名リストに載せた勧誘ができ、リストの上位に上がると巨額のお金が手に入るという内容です。

 アメリカで従来から郵便で出回っていた不法な勧誘方式ですが、1996年頃に電子メール版がアメリカで流行って、まもなく日本語版も出回りました。文面では合法性を強調していますが、実際はそうではありません。アメリカでは連邦郵政局が非合法という見解を発表し、日本でも警察庁が非合法性が高いものとして警告を発表しています。

 甘い誘惑には特に気をつけましょう。

 <警察庁のねずみ講警告>
 http://www.npa.go.jp/koho/nezumiko.htm

(3)ネットワーク詐欺

 ネットワークで物品を売買する電子商取引(エレクトロニック・コマース)が実用化されつつあります。売り手と買い手の双方の身元確認を厳密に行うなど不正がないように工夫された方式です。

 しかし、これとは別に、物品を販売するホームページで客を募集し、代金を先払いで振り込ませ、次の瞬間にはホームページが消えているという悪質な詐欺事件も発生しています。相手が信頼できるかどうかを確かめるのももちろんですが、少なくともホームページが数ヶ月の期間継続していることを確かめる程度の配慮が必要です。

 このほか、プレゼント募集や姓名判断占いなどのサービスやアンケートを行うふりをして、電子メールアドレスを集めるという詐欺まがいの行為も頻発しています。集められた電子メールアドレスは、広告メール(電子メールで送られる商業広告)宛先リストとして名簿業者に販売される場合もあります。
 
 このような目的外の個人情報の利用は慎まれなければなりませんが、サービスの利用者を保護するために自主的に個人情報保護のガイドラインを設けている事業者もあり、1998年4月からはそのような事業者を認定して「プライバシーマーク」を発行する制度(通商産業省・財団法人日本情報処理開発協会)が開始されています。

 財団法人日本情報処理開発協会
 http://www.jipdec.or.jp/


2.電子メールのエチケット

 電子メールは電話や郵便と同様に人と人との通信を行うメディアです。通常生活の対人関係のエチケットがそのまま適用されますが、インターネットの特性から、特につぎのようなことに気をつけるべきとされています。

・無意味な情報を相手に送り付けない。

 電話や郵便とは異なり、相手は1分毎に接続料金を支払っていることに留意しましょう。

・送信した電子メールは取り消しできない。

 送信前に「宛先」と「内容」をよく点検しましょう。

・相手の使用環境に配慮する。

 特定機種に依存した文字やデータは相手のパソコンでは表示できない場合があります。事前確認を。

・すぐに届くわけではない

 電子メールが迅速に配送されるとはいえ、相手が不在だったり、時差があって寝ていたり、あるいはパソコンが壊れて電子メールが読めないこともあります。迅速な応答を期待してはいけません。

・文化の違いに配慮

 相手の住んでいる地域の文化や育った環境は必ずしも自分と同じわけではありません。人権に関する制度や思想も各国で異なります。相手に自分の考えを押し付けることはできません。また、隠語や俗語を避け、一般的な言い回しで誤解のないように書きましょう。

・顔の見えないコミュニケーション

 顔も見えず声も聞けない文字だけの交流です。表情で感情を伝えることもできません。冗談のつもりで書いたことでも、感情が伝わらずに相手を怒らせてしまう場合もあります。文章だけでも相手によくわかるように状況を伝える心がけが必要です。

・チェインレターの禁止

 ネチケットの中でも例外的に禁止事項として強制されているのがチェインレターの禁止です。幸福の手紙や不幸の手紙のように、第3者に転送することを要請するような電子メールをチェインレターといいます。多数の利用者が相互に転送をしてしまうと、簡単にインターネットの情報流通処理能力を超えてしまい、ネットワーク全体がダウンしてしまう危険がありますので、悪意であれ善意であれ、理由の如何を問わず禁止されています。以前、珍しい血液型の献血を求める電子メールが世界を駆け巡ったとき、もはや献血の必要がなくなったあとでも撤回できず、問い合わせが継続して問題となりました。チェインレターは伝播したのと同じルートでしか取り消せませんし、それでも必ずしも取り消せるとは限りません。チェインレターを受け取ったら、誰にも転送せず、すぐに電子メール管理者に知らせてください。電子メール管理者は発信元の管理者に連絡をして発信をとめるよう行動することが求められます。
 

依頼のマナー

 電子メールで専門家に助言を求めたり、学校間交流の申し入れをできるのはインターネットの醍醐味ですが、そのような際にもエチケットの心構えが大切です。

1 助言を求める方法

 効果的に助言を得られるためのコツとして、次のようなことがあります。

・自分が調べようとしていることついて、相手が理解できるように説明ができること。

・聞きたいことが何かが、自分でわかっていること。

(聞きたい質問自体をまとめられない場合には、まずその質問をまとめるための助けを求めましょう。)

・WWWや参考書、事典等でわかることは最初に調べておくこと。自分で当然すべき調査をせずに人にものを尋ねるというのは、強い反感を引き起こします。

・質問は、ふさわしい相手に尋ねること。自分の質問が基本的なものなのか、高度なものかを考え、高度な質問でない限りは専門家に尋ねてはいけません。

・背景も説明すること。何の事柄についての調査なのかを最初に説明しないと質問だけでは意味がわかりません。

・インターネットにこだわらないこと。身近な人の助言の方が役にたつことも多いもの。単に流行だとか、簡単だから、という理由でインターネットに答えを求めないように。

・ちょっとした配慮を。人にはあなたを救ける義務はない、ということを心に留めておきましょう。質問を簡単なメモ書きでは済ませずに、きちんとした文章で、誤字脱字にも注意を払いましょう。1〜2行の自己紹介をし、文末には「何らかのご提案をいただければ幸いです。」といった丁寧な文章をおきましょう。

・人の役にたつようにしましょう。自分の質問が他の人にも興味がありそうに思えたら、入手した答えをまとめ、興味のある人には誰にでも提供しましょう。また、同じ立場の人にそうしたものが手にはいるということを広めることも考えましょう。

・誰にたずねたらよいかをたずねましょう。「どなたも回答をご存じでなければ、どなたか知っていそうな方を教えていただけますか?」というような文章をいれておきましょう。「どなたか、Xについて教えていただけますか?」と書く代わりに「どなたか、どうやってXについて調べればよいのか教えていただけますか?」とするのも一案です。

・お礼をいいましょう。依頼に好意的な回答をくれた人にはそれぞれに簡潔なお礼のメールを送りましょう。インターネットでは人間的な雰囲気が好まれます。

・時間をかけましょう。かならずしもすぐに回答がもらえるわけではありません。また、かならず答えをもらえるとも限りません。

 助けの求め方
 http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/gettinghelp.html

2 交流の申し込み

 海外の日本人学校や有名校などは希少な存在なので日本中から交流希望が殺到しがちです。いちいち応じていれば相手校のカリキュラムの正常な遂行が妨げられることは容易に察しがつくでしょう。相手の立場を考えて、良い返答を強制してはいけませんし、応答がなくても決してがっかりしてはいけません(応答がないのは、相手が忙しい場合と、海外の通信事情が不安定なためにメールが失われる場合とが考えられます)。

 日本人学校プロジェクトなどの共同プロジェクトに参加すれば、単独交流の場合よりも多くの効果を得られるはずですので検討してみましょう。

電子メールのセキュリティ

 電子メールは、葉書で文章を送るのと同じく、アドレス違いで他人に届いたり、通信経路の途中でだれかに覗き見られることもあります。クレジットカード番号など秘密にすべきプライベートな情報はそのまま電子メールで送ってはいけません。暗号化ツールなどを用いて暗号化して送る方法も開発されています。

 また、勧誘、ねずみ講、デマなどの迷惑メールが届くこともありますが、「不要」などの応答をすると逆効果になる場合もあるので無視するのが最良の対応方法とされています。頻繁に同じ差出人から届く場合は、メール管理者に連絡して自動排除(kill file)の設定を講じることもできます。


3.コミュニケーションのエチケット

 インターネットではコミュニケーションの範囲は拡大しますが、そこで適用される対人関係のマナーは通常の社会生活のマナーと同様のものです。社会生活のマナーやエチケットを、ネットワークにおいて子どもたちが仮想的に体験して学ぶこともインターネット利用の教育的効果として有用なことです。

 複数の人々との間のコミュニケーションにおいて、ネットワーク上のエチケットとして知っておくべきことをいくつか紹介いたしましょう。

メーリングリストのエチケット

 メーリングリスト(ML)は参加者間に限定し閉じた(クローズド)コミュニティです。MLのルールはローカルルールとして参加者間の合意のもとに醸成されますので、コミュニティの雰囲気を尊重しましょう。新しい参加者は、数週間の期間は既存の参加者間の議論をモニタリングしたり、過去の議事録(ログ)を取り寄せてコミュニティの雰囲気をつかんでから投稿すると良いでしょう。

 MLはたいてい何か特定のテーマをもって運営されています。投稿する内容はそのテーマに則した話題でなくてはなりません。テーマに則さない話題についての投稿は、どこか別の場所で発表するべきです。

 また、MLに投稿した内容は全参加者に転送されるのだということを常に念頭においておきましょう。参加者はみな1通の投稿を読むごとに通信料金を負担しています。巨大な画像データなどを参加者の合意なくいきなり送りつけてはいけません(希望者だけに送付するとか、ホームページに掲載するという方法がよいでしょう)。特定の人との個人的な対話はMLに投稿するのではなく個人宛のメールで送るべきですし、誰かと口論となった場合にも他の参加者に迷惑をかけないように個人メールにするべきです。投稿メールを書き終えたら、すぐに送信する前に、ML参加者全体に送るべき内容なのか、個人宛に送るべきかを見なおしてから投稿しましょう。

 電子メールで文字の形で送れる情報は限られています。表情や感情を伝えることは難しく、言い回しや表現の解釈の文化的違いから誤解が生じる可能性は常にあります。自分が正しいと過信することなく、相手が何をいおうとしているのか、行間を読み取る努力が必要です。このことは、経験を重ねることで身についてくる習慣ですので、初心者のうちは短絡的な判断から勝手に誤解して気分を害したり、逆に気づかぬうちに誤解を与える言い回しをしてひんしゅくを買うなどのミスを犯しがちですから気をつけましょう。

 このほかにも、トラブルを避けるためのネチケットがいろいろ工夫されています。「ネチケット・ガイドライン」を一読しておくことをお勧めします。

チャット(リアルタイム交流)のエチケット

 チャットなどのリアルタイムの交流でも、話題に沿った書きこみを心がけることなどの通常のコミュニケーションのエチケットが適用されるのは言うまでもありませんが、メーリングリストのような時間差のあるメッセージの交換の場合とは違う特別なネチケットもまた適用されます。

 まずチャットの始めには挨拶をしましょう。また終わるときの挨拶は特に重要です。お別れの言葉を書きこんで、相手からの応答を待ってから終了しましょう。さもないと、相手があなたの応答をいつまでも待ってしまうかもしれません。

 相手から即座に返事がなくても催促してはいけません。急用ができたり、システムトラブルが起きたりなど、すぐに返事ができない理由はいくらでも考えられます。

 タイプ入力速度が遅い人は、ミスタイプをしてもいちいち修正する必要はありません。チャットでの対話のスピードで、あなたのタイプ能力はすぐに相手にわかりますし、不完全な書きこみでも何がいいたいのかは相手はたいてい理解してくれるものです。タイプミスを気にするよりも、話題に沿うことのほうが大切です。

 何よりも大切なのは、通常の対話と同じく、聞く(見る)態度と話す(書く)態度です。

テレビ会議のエチケット

 テレビ会議の場合には、画像や音声の通信量が大きいので、テレビ会議の相手や同じ通信回線を別の目的で共有している利用者に迷惑をかけないための配慮が必要です。

 見るだけの参加の場合は、自分の側からの画像の送出はしないように設定しましょう。

 画像を送出している場合、わき見をしたりあくびをかいたりするしぐさも相手に見えてしまい、きちんと話を聞いていて貰えないという不快感を与える場合があります。用事があって都合が悪いときには、自分の側からの送信画像を静止させましょう。不在が長引きそうなら画像送信を止めておくことも考えましょう。

 録画映像をビデオ会議で送信するのは悪い方法です。

生映像の必要がない画像は、ビデオテープを郵送したり、ホームページに掲載したりすることで、通信回線の占有時間を節約しましょう。同じ回線を共有している他のユーザへの配慮です。

 テレビ会議を効果的な実演にすることで、会議を盛り上げる心がけも大切です。次のページが参考になるでしょう。

 CU-SeeMeビデオ会議を効果的にする要素
 http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/netiquette/videoconfJ.html


4.知的所有権への配慮

 インターネット上の情報は、すべて誰かの著作物であり、著作者の許可なく複製することは法律で禁じられていることはご存知だと思います。

 知的所有権(知的財産権ともいいます)は、著作権や工業所有権など、人間の知的な創作活動などから生産されたものに対する権利です。文芸、学術、美術、音楽の作品やコンピュータプログラムは著作物として、また、新聞、雑誌、百科事典等は編集著作物として、著作権法で保護されています。また、特許、実用新案、意匠、商標といった、発明や考案に関する知的創造の成果は工業所有権の対象として特許法で保護されています。おおむね「表現」は著作権法で、「アイディア」は特許法での保護の対象となります。

 知的所有権の尊重は、万国著作権機構(WIPO)などを中心に国際的に保護法の整備が図られている現在では、情報を利用する者がすべて身につけておくべき態度といえます。

著作権、著作者人格権、著作隣接権

 著作物の利用を許諾したり禁止したりする権利が著作権で、著作権に付随する公表権・氏名表示権・同一性保持権は著作者人格権として、また録音・録画・放送・レンタルに関する権利は著作隣接権として保護されています。

 著作権,著作者人格権,著作隣接権は,著作物を創作した時点で自動的に発生します(権利を得るために登録などの手続は必要ありません)。これは幼児の作品であっても適用されます。ですから、著作権は放棄することができず、権利の主張をしないことができるだけです。著作権は、原則として著作者の死後50年が経過するまでの期間、保護されます。

 著作権法では著作者の権利と、誰かが著作物を使用する際の便宜を調整するための規約が設定されており、著作者は使用に対して使用料などを求めることができます。著作物は公表されたものであっても原則として著作者の許可なく複製したり配布することはできません。インターネット上の情報を複製や印刷などをして使用したいと思うときには、著作者の許諾が必要となります。

 ただし、著作権の乱用により公正で円滑な利用が妨げられ文化の発展が阻害されないように、著作権法では下記の場合に著作権を制限し著作権者に許諾を得ることなく利用できることを定めています。

・私的使用のための複製 ・図書館等における複製

・引 用 ・教科用図書等への掲載

・学校教育番組の放送等 ・教育機関における複製

・試験問題としての複製 ・点字による複製等

・営利を目的としない上演等

・時事問題に関する論説の転載等

・政治上の演説等の利用

・時事の事件の報道のための利用

・裁判手続等における複製

・放送事業者等による一時的固定

・美術の著作物等の原作品の所有者 による展示

・公開の美術の著作物等の利用

・美術の著作物等の展示に伴う複製

・プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等

 それぞれに、適正利用のための条件が厳密に定められていることに注意してください。たとえば、著作権法第35条では、

 (学校その他の教育機関における複製)

 第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

と規定されています。つまり、教師は授業の過程で使用するために著作物を複製することができますが、ドリル、ワークブックの複製や、放送番組のライブラリー化など、著作権者に経済的不利益を与えるおそれがある場合にはこの規定は適用されません。複製が認められる範囲であれば、翻訳、編曲、変形、翻案もできます。これ以外の条件での使用については許諾が必要で、著作権者に問い合わせて許諾を得れば使用することができます。

 また、たとえばNASAの画像のように、著作権者が広範な使用を認める表示をしている場合もあります。

 NASAの主張:

http://www.nasa.gov/gallery/photo/guideline.html

要約「これらの画像等に対しては著作権を主張しません。ただしNASAのロゴマークは除きます。画像の中に誰であるかわかってしまう人がいた場合、 その人物に無断で営利目的に利用するとプライバシーやパブリシティーを侵害するおそれがあります。これらの画像をNASAがその商品やサービスを公認しているという意味に用いたり、 その他の誤った方法で利用したりするべきではありません。」

 著作権についての情報は文化庁のホームページに説明されています。また、アイディアに関する工業所有権については特許庁のホームページで確認してください。

 著作権制度について(文化庁)

 http://www.bunka.go.jp/8/VIII.html

 工業所有権制度について(特許庁)

 http://www.jpo-miti.go.jp/tokkyo/tokkyo.htm

WWWのリンク

 WWWのリンクを行う際に許諾が必要かどうかについては、法文化されていません。他人の著作物をあたかも自分の著作物のように誤認させる形態でリンクするような場合には著作権の侵害となりますが、通常はリンクを無断で行っても著作権の侵害にはならないという意見が有力です。ただしもちろん、リンクの際に事前に相手に連絡をすることは、礼儀として常に正しく推奨される態度です。

肖像権

 肖像権はまだ法文化されてはいませんが、権利として確立しつつあります。他人の顔写真を「無断で」掲載するような場合、私的プライバシーの侵害として精神的損害に対する慰謝料を請求される場合があります。また、タレントや有名人などの顔写真は経済的価値をもつ(パブリシティ権)ため、その損害に対して賠償を請求される場合があります。もちろん、礼儀としても、無断ではなく許可を得る姿勢が大切です。

http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/report/19980825/netqtext.html